LEONの誌面が語る「ファッションメディア15年史」

映画『プラダを着た悪魔2』が話題となっています。 前作(2006年)が、雑誌こそがトレンドの聖書だった「旧時代の終焉」を描いていたとすれば、続編はデジタルとアルゴリズムが支配する「新時代のリアル」が舞台です。

ふと手元にある2011年の雑誌『LEON』10周年記念号を読み返すと、そこには今の時代では考えられない「メディアのパワー」を感じました。

 

1. 「126万円はお買い得」が成立した時代の熱量

アリゲータートートバッグに添えられた「126万円のお買い得」という強烈なコピー。

現代の感覚では少々違和感すら感じるコピーですが、当時はミランダのような圧倒的なパッションや権威が「これが良い」と宣言すれば、それが絶対的な価値を持つ時代でした。また、雑誌の1ページにも読者の価値観を塗り替えるほどの「魔法の力」があったと言っても過言ではないでしょう。

2. 価格1.5倍の背景と、変化した「納得感」の形

それから約15年。 現在、同じクラスのアリゲーターバッグの価格は、当時の約1.5倍にまで上昇しています。

これは単なる物価高ではなく、良質な原皮調達の厳格化や、最高級のクロコダイルを扱える熟練職人の減少など、素材と技術の「希少価値」が正当に評価されるようになった証でもあります。

しかし、この「1.5倍の価値」を伝える手段は、雑誌のトップダウンからデジタルの多層的な体験へと変わりました。

  • かつて: 雑誌が「モテる」と煽り、消費者がそれに憧れる。

  • 現在: ユーザーが「検索」し、素材の背景や作り手のこだわりという「ストーリー」に納得して選ぶ。

3. 現代の「ミランダ」はどこにいるのか?

今の時代、トレンドを決めるのは特定の編集長ではありません。 個々のユーザーの好みを読み取るSNSのアルゴリズムや、必要な情報を瞬時に引き出す検索エンジンが現代の「門番」です。

最高級レザーアイテムを探している方は、雑誌の特集を待つ必要もありません。自分のタイミングで検索し、高解像度な画像や動画で細部を確認し、オンライン上で決済する。好き嫌いはさておき、これが現代の主流。

AIが弾き出す「効率的な提案」に対し、「芸術性や美学」がどう生き残れるかを考えさせられます。

結びに:

変わらない「本物」のオーラ

メディアの形がどれほど変わっても、15年前の誌面で放っていたアリゲータートートバッグのオーラは、今も色褪せることはありません。むしろ、情報の氾濫する現代だからこそ、一点一点時間をかけて作り上げる「本物」の価値はより際立っています。

『プラダを着た悪魔2』では、デジタルに翻弄される出版業界が描かれています。しかし、どんなに時代が変わろうとも、最後に人の心を動かすのは「プロダクトそのものが持つ圧倒的なストーリー」であるという事実は変わりません。

私たちはこれからも、古き良き時代の熱量を継承しつつ、今の時代に合った形も融合し、ストーリーをお届けしていきたいと考えています。

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